2015-01-05

ガイドライン外れのアレルギー診療

今日の朝日新聞の朝刊に、厚生労働省研究班「アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班」の調査結果が掲載されていました。この調査は患者さん側の要望を受けて、厚生労働省と日本アレルギー学会が協力する形で、2014年2~3月に実施されました。有効回答はアレルギー科を標榜する医師1,052人、患者8240人。医師の内アレルギー学会専門医は30%で、アレルギー科を標榜していてもアレルギー学会専門医でないケースが70%でした。
さらにガイドラインから外れた診療をしている医師が、少なからずいることが判明しました。このうち頻度の多いアトピー性皮膚炎と食物アレルギーにつき例を挙げます。

【アトピー性皮膚炎】
1. いまだにステロイド「使いたくない」患者が多数派
診療ガイドラインでは、皮膚症状の程度に応じた適切なランクと使用量を具体的に示して、ステロイド外用剤の使用を推奨しています。症状がある場合には、ステロイド外用剤による治療が必要です。ところが実態は、患者の65%(成人で59%、小児で71%)が、ステロイドを「使いたくない/どちらかというと使いたくない」としています。

2. 外用剤を「できるだけ薄くのばす」方がよいとの誤解が多い
診療ガイドラインでは、これを推奨していません。なぜなら外用剤は治療段階に応じて適切な量を使用することが重要であり、「できるだけ薄くのばそう」とするのは使用量が減ったり変動するため、望ましくありません。ところが実態は、医師の23%がステロイド薬を「できるだけ薄くのばして塗るよう指導」し、患者の56%も医師からそのように指導されていると回答しています。

軟膏の適切な使用量の目安としてFTU(フィンガーチップユニット)を使います。FTUは大人の人差し指の一番先から第1関節に乗る量で、約0.5gに相当します(チューブの穴の直径が5mm程度の場合)。これを1FTUと呼び、大人の手のひら2枚分くらいの面積に塗ることができます(体表面積の約2%)。FTUを目安に、自己判断で増減せずに常に医師に指示された量を塗るようにしてください。
マルホさんの資料を引用させていただきます。

3. 1割が「入浴時の石けん不使用」
診療ガイドラインでは、石けんの使用が皮膚症状を悪化させるとは考えておらず、標準的には石けん使用を禁止していません。ところが実態は、医師の8%が「入浴時の石鹸使用は皮膚を悪化させるので禁止」しており、患者の12%(成人で12%、小児で12%)も「入浴時に石けんを使用しない」よう主治医から指導を受けているようです。ただし成人の29%、小児の33%は、診療ガイドライン通り「石けんを使用する」よう指導されています。

【食物アレルギー】
1. アナフィラキシー既往でもエピペン処方は5割のみ
療ガイドラインでは、アナフィラキシーの対症療法にアドレナリン(エピペン)が推奨されています。アナフィラキシー経験がある患者はエピペンを所持し、緊急時に対応できるようにしておいたほうが良いでしょう。ところが実態は、医師の49%しかこのような患者にエピペンを処方しないようです。

2. いまだに「卵アレルギーを理由に鶏肉と魚卵を除去」ケースがある
診療ガイドラインでは、卵アレルギーだからといって鶏肉や魚卵を除去する必要を記載していません。鶏卵と鶏肉は同じ鶏由来ですが、鶏卵と鶏肉は食べものとして別ものであり、また同じ「卵」だからというだけで魚卵を除去する必要もありません。ところが実態は、医師の6%が鶏卵アレルギーの症例では「鶏肉/魚卵も怪しいので禁止」指導しているようです。

私にとって、今回の報道は驚きでした。専門医ほど薬剤の副作用を恐れず、思い切った効果の高い治療をする印象があります。非専門の場合は、有効性よりも薬剤の副作用を恐れ及び腰になり、マイルドな治療に甘んじる傾向になるのでは、と推測します。患者さんがどこの医療機関を受診しても、一定水準の標準治療を受けられるのが望ましいです。

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