2014-09-07

ココナッツオイルを肌に塗っても大丈夫?

ココナッツオイルがブームになりつつあります。私もココナッツオイルを愛用しています。ただし、あくまで食用としてです。一方ネット上では、髪や肌のスキンケアとしてココナッツオイルを用いることを推奨した記事も目立ちます。昨夜、私も試してみました。入浴後に顔全体に塗ってみました。ココナッツの甘い香りがアロマオイルのようで、気分が和らぎます。伸びが良いので1滴で十分顔が潤い、その割にべたつきません。
しかしながら皮膚科専門医、アレルギー専門医の立場からは、安全性には疑問を抱きます。それは経皮感作によるアレルギーのリスクです。

専門医の先生方にとっては、茶のしずく石鹸による加水分解小麦アレルギーの問題は記憶に新しいことと思います。
ピーナッツの経皮感作によるアレルギーも、トピックスになりました。
2003年イギリスの小児科医Lack G.らは、13971人の入学前の子供たちを調査して、49名のピーナッツアレルギー児を見出しました。これらの症例において、ピーナッツアレルギーを起こす原因を研究した結果、最大の要因はピーナッツオイルを含んだ皮膚保護用製剤の使用であることを結論しました。食べることでアレルギーを起こすのではなく、微量のピーナッツ抗原が残存するピーナッツオイルを含む製剤を皮膚に塗ってピーナッツ抗原と接触することで食物アレルギーが激しくなっていく可能性を指摘しています。

さらに彼らは2008年には、二重抗原曝露仮説を発表しました。食物アレルゲンの経口摂取は、食物アレルギーの発症を抑制し、皮膚からの食物の侵入は食物アレルギーを引き起こすという考えです。、皮膚からの食べ物の侵入を防げば、食物アレルギーの発症も防げる可能性を示唆しています。
専門医の先生方にとっては、この赤ちゃんのシェーマは学会や講演会でお馴染みのことでしょう。
経皮感作が発症するためには、①皮膚角層のバリア障害、②アレルゲンの皮膚透過性、③皮膚での免疫応答の3要素がそろって初めて成立します。具体的には、アトピー素因やフィラグリン遺伝子変異、職業性皮膚障害、スキンケア製品に含まれる角層バリアを障害する物質(界面活性剤など)、加工され低分子化された食物関連のスキンケア製品などが誘発因子と考えられます。
それ故に、乳幼児への食物アレルギー関与のアトピー性皮膚炎の発症を防ぐためには、口の周りを含む全身のスキンケアが重要であり、皮膚炎があれば早期にステロイドを塗って治めることです。

もし経皮感作が成立してしまうと局所に接触蕁麻疹が生じるだけでなく、該当する食品を食べるとアナフィラキシーを起こし、時として命取りになることもあります。特にピーナッツでは致死率が高いです。
私は、ココナッツオイルでもピーナッツオイルと同様の事象が起こりうるのでは、という懸念を抱いています。現時点では、「ココナッツオイルの経皮感作によるアナフィラキシーの症例」の報告はないようですが、今後ブームに乗り、起こりうると考えます。あくまで私見ですが、ココナッツオイルを肌に塗ってはいけない禁忌のケースを挙げます。
・アトピー性皮膚炎。
・職業性皮膚障害で手に皮膚炎がある。
・肌に何らかのトラブルがある。
・ケミカルピーリングやフラクショナルレーザーの治療直後。
・ニキビ治療薬アダパレン使用中。

健康な肌の方がこうしたリスクを承知の上で、ココナッツオイルでスキンケアをされるのは結構なことだと思います。もし肌に異常を生じたら、即座に塗るのも食べるのもやめることです。
おそらく現時点では、ココナッツオイルのスキンケアに対してアンチの意見を唱える者は、私以外にはいないでしょう。しかしながらブーム到来の今だからこそ、専門医の立場で敢えて警鐘を鳴らしておきます。

14 件のコメント:

  1. 日本生物工学会がありました。北海道産シーベリー油がアトピー改善に効果があるとの報告がありました。シーベリーは皮膚細胞によい奇跡の果実とか。シーベリーオイルは医薬品ですか。

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  2. シーベリーオイルは医薬品ではありません。あくまで食品としては栄養価に富み、奇跡の果実かもしれませんが、それを皮膚に外用して「奇跡の塗り薬」になるとは思えません。他の植物油と同様に保湿剤としては有用だと考えますが、感作が成立してしまうと経口摂取する可能性のあるものは、やはりアナフィラキシーのリスクはあります。アトピー性皮膚炎の患者さんに対して安全性と有効性を確認するためには、慎重な臨床試験が必要と考えます。

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  3. 先生にご質問したいことがあります。
    最近、ライスフォースや米肌などお米の成分?の入ったスキンケア商品がありますが、これらの商品を使うと肌が荒れることがあります。
    食べる分にはいっこうに大丈夫なのですが、もしかするとお米アレルギーなのではないかと不安になることがあります。
    ネットで調べたりしましたが、お米アレルギー自体あまりないのかもしれませんが、よくわかりませんでした。
    肌に塗るのはいけないが、食べるのは大丈夫というようなアレルギーもあるのでしょうか。
    よろしければ先生のご意見伺えたら嬉しいです。

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  4. スキンケア商品も含めて化粧品には、界面活性剤、パラベンなどの防腐剤、エタノール、色素、香料などが含まれており、米アレルギーよりも、添加物に対してのアレルギーの可能性の方が高いと考えます。
    流行りのオーガニックコスメの中には、レモンやアロエなどアレルギー物質が含まれていることもあり、天然=安全とは限りません。

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  5. はじめまして。
    ココナッツオイルについて検索していてこのブログに辿り着きました。
    私は鶏卵アレルギーなのですが、2日前からオーガニックのエクストラバージンココナッツオイルをアトピーで乾燥している部分に塗ったりしています。まだこれといった効果も異常も感じられません。
    アナフィラキシーを起こす可能性があるのはココナッツにアレルギーがある人、ということでしょうか?それとも私のように鶏卵にしかアレルギーがない人でも起こす可能性はあるのでしょうか?
    まだ中学生で知識も浅いせいか先生の記事を十分に理解することができませんでしたので、教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

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  6. 「アナフィラキシーを起こす可能性があるのはココナッツにアレルギーがある人」と判断してくさって結構です。鶏卵とココナッツでは抗原の交叉性がないため、(まったく似ていないという意味です。)双方に同時にアレルギーを起こすことはまれです。将来起こりうることは予測できませんが、使用中に異常がなければ続けられても結構ですし、もし異常があれば使用を中止すべきでしょう。

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  7. 初めまして。ココナッツオイルが髪の毛に良いと聞いたので ヘアトリートメントのように
    使ってみたら その後アレルギーの症状が出ました。2度ほど試しましたので 偶然ではないようです。ココナッツを食べるのは平気なのですが、、、、。不思議でなりません。

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  8. オーガニックのココナッツオイルを食したところ、喉、鼻が風邪のようにただれ、頭部が重く、風邪で発熱したかのようにしんどいです。。ココナッツが大好きでちょくちょく食べていましたが、今までまったく問題ありませんでした。
    今年に入ってスキンケアとして顔や手に何度か塗っていたので、仰る通りの事態が起きてしまったと感じます。このような症状になるのは2度目です。初回は風邪かもと大して気にしていなかったのですが、今回で確信しました。
    ちなみに、若干のアトピー体質で、皮膚が弱く、手には主婦湿疹があります。
    いろいろ探してこのページにたどり着けて良かったです。

    ココナッツにまだ未練があり、皮膚に塗らなければアレルギーが完治して、いつか食べれるかなと楽観したいところです。可能性はどのようなものでしょうか?

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  9. 初めてお伺いします。
    主人が全身アトピー性皮膚炎で、酷くなったのは二十年くらい前から。当時ガソリンスタンドでバイトしていたのですが、恐らくその頃からだと…。
    服用中の薬は、
    ・セチリジン塩酸塩
    ・セレスタミン配合錠
    塗り薬
    ・マイセラ軟膏
    ・デルトピカ軟膏
    ・デキサメサゾン軟膏とスルプロチン軟膏との混合薬

    ココナッツオイルは、上記との併用は問題ないでしょうか?

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  10. 初めまして。
    アトピーの家族に相談されて、このページに来ました。

    私の理解が合っているかご教授ください。


    命にかかわるアナフィラキシーショックを起こすアレルギーの例として、「そば」「ピーナッツ」など、食品に表示義務のあるアレルギー食品がありますが、症例はなくともココナッツオイルにもアナフィラキシーが起こる可能性がある、とお考えでしょうか?
    そもそも、その食品に対してアレルギーがあれば、どんな食品でもアナフィラキシーは起こりうる、ということでしょうか?


    今回、ブームであるので、ココナッツオイルについて指摘されていますが、上記①を前提とすると、
    「あくまで私見ですが、ココナッツオイルを肌に塗ってはいけない禁忌のケースを挙げます。」の文を、
    ”ココナッツオイル”を”すべての食品”と読み替えても良いことになりますか?


    本来、身体はすごく良くできていて、身体は間違わないという視点にたつと、
    食事から摂取するものに対して、危ないモノを排除するシステムを体は持っているはず。健康な皮膚にもバリアがあるはず。
    だけど、傷が有って皮膚のバリアが壊れていたり、バリアを壊す界面活性剤と一緒だったり、
    ナノ化されていてバリアをすり抜けたり、で、身体の想定外の事態でアレルゲンが入ってしまう、ってことですよね。

    安全面を考えるとアトピーの人にはワセリンが一番ってことになりそうですね。
    ワセリンはベトベトするので、使い勝手がわるく、”ゴールデンホホバオイル(未精製オイル)” が栄養豊富でアトピーに良いって聞いたのだけれどどう思う?とアトピーの家族から相談されました。
    安全面を考えると、ホホバオイルにしても、アトピーだったらまず精製のホホバオイルから試した方がよさそうですね。



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    1. 初めまして。私も手湿疹があり、ココナッツオイルも時々飲んでいたのですが、私の場合はやはり手に直接塗った方が良い効果がありました。
      ココナッツオイルは塗ってもすぐ乾きべたつき感はなく快適です。少しの間ヒリヒリする場合もあります、数日前よりまめに塗っていますが、赤い部分が白っぽくなってきて痒みも楽になってくる様です。湿疹の部分を保護する感じです。湿疹の特徴ですか、透明な水がスポンジの様に出てくるのも改善してます。
      ココナッツオイルにも色々ある様なので、先ず飲んで美味しく体調も良くなる感じの良質なものを選ぶ必要もあるかと思います。
      ゴールデンホホバオイルも良いとコメントにありましたので、有機のゴールデンホホバオイル注文しました。このオイルも試して良ければまたコメントできるかもしれません。では失礼いたします。

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  11. ①ココナッツオイルにもアナフィラキシーが起こる可能性がある、と考えます。自験例でナッツ各種でアナフィラキシーを生じた患者さんに、ココナッツオイルのRASTを検査しましたが陰性でした。特定の食品にアレルギーを示したからといって、他の食品すべてにアナフィラキシーを起こすわけではありません。
    ②ご指摘のように”ココナッツオイル”を”すべての食品”と読み替えても良いことになります。ハチミツでスキンケアをしたら、その後経口摂取でアナフィラキシーを生じた症例が学会で報告されていました。

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  12. ご教授有難うございます。

    文章が分かり難くてすみません。
    「特定の食品にアレルギーがあると、他の食品にアナフィラキシーを起こすか?」ではなくて、特定の食品(A)にアレルギーがあると、(A)がどんな食品であれ、(A)によってアナフィラキシーショックが起こる可能性がありますか?

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  13. 特定の食品(A)にアレルギーがある場合、全身症状を伴わない通常の蕁麻疹の反応に留まり、必ずしもアナフィラキシーにまで及ばないこともあります。
    さらに特定の食品(A)が加熱処理されている場合には、原因抗原が変性しアレルギー反応が出ないことはありえます。生のマンゴーでかぶれても、マンゴープリンなら大丈夫という方は多いです。

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