2013-05-18

歌劇「イーゴリ公」の世界に浸る

昨夜はNHKホールにて、N響定期公演がありました。ロシア人指揮者によるショスタコヴィッチ、チャイコフスキー、ボロディンの作品が演奏されました。私のお目当ては、ボロディンの歌劇「イーゴリ公」の「ダッタン人の踊り」でした。プログラムの最後でしたが、期待通りの名演奏に満足しました。オーケストラを聴くと習慣で、パーカッションの演奏者ばかりをオペラグラスで観察してしまいます。譜面を見ながらカウントし、自分の出番を待ち構える緊張した表情を見るのが好きです。一人一人の演奏がソロのように響き渡ります。フィナーレは全パート揃って盛り上がり、クライマックスを迎えて終演しました。

「ダッタン人の踊り」はCMでも起用され、サビの部分は有名です。私は4年くらい前にyoutubeの動画で、たまたま「ダッタン人の踊り」の合唱とバレエを見たら、魅了されてしまいました。エキゾチックなベリーダンス風の衣装を纏った女性ダンサーの優美な舞いと、勇壮な力強い男性ダンサーの群舞が交互に展開されます。バレエの振付は1890年の初演以降、いくつかのバージョンがあるそうです。

さて作曲者のボロディンは、実は専業の作曲家ではなく、本業は化学者です。しかもサンクトペテルブルク大学医学部を最優秀で卒業した医師でもあり、26歳でハイデルベルグ大学化学科に再入学。卒業後は母校サンクトペテルブルク大学医学部生化学の助教授、教授と進み、有機化学の研究家として多大な業績を残しました。彼は作曲家として秀でていたにもかかわらず、主に化学者として収入を得ており、多忙のため「日曜作曲家」を自称していたそうです。53歳の謝肉祭のときに、上機嫌に飲んで歌って踊って楽しんでいたところ、動脈瘤の破裂により急死。そのため歌劇「イーゴリ公」は未完の作品です。

それにしてもボロディンは、優秀な医師であり、研究者であり、不朽の名作を生んだ作曲家であり、多くの才能に恵まれながら、今の私と同じ53歳の若さでカーニバルで踊って亡くなってしまうとは、残念です。しかしながら彼の名は、名作歌劇「イーゴリ公」とともに永遠に残るでしょう。

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